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さようなら山の上ホテル 中編

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山の上ホテルに宿泊するのは、新郎新婦&遠方から上京した両家のご親族。そして、遠方から上京した私だ。
つまり、俺だけ他人でなんだか申し訳ない。

ホテルの近くの居酒屋で3次会が終わったのは午前3時。
なつかしい野郎共をそれぞれタクシーで見送った。ホテルに帰るのは新郎と私だけだ。

私たちは、腹減ったな、何か喰う?といった具合に、フラフラ歩いてホテルへの帰り道にあった富士そばへ向かった。



店の外のショーケースの前で、「カツ丼あるね、ちょっと高いけど」だとか、「カレーカツ丼っていうのがあるけど、この時間からは重いな、後悔するやつだな。」だとか「ラーメンあるじゃん、昔ながらのラーメン。昔ながら、ってのがややひっかかる。」などと話しながら、結局、「富士そば」だっていうのに、一切「そば」というフレーズが登場しないまま、彼はカツ丼、私は昔ながらのラーメンの食券を買った。

いい歳になって、お互い小銭がないわけでもないのに、富士そばのカツ丼を「ちょっと高いけど」と言った彼は、二十歳そこそこの、あの頃の彼とちっとも変わってないように見えた。


当時、私たちは、彼の住んでいたアパートの近くにあった「吉野家」に、夜中になるとよく行ったものだ。
その吉野屋にはなぜか「カツ丼」があって、私たちは、その吉野家のカツ丼をたまに食べた。牛丼の大盛より50円くらい高かったと思う。ちょっと高いカツ丼。

私はあれから一度も吉野家で「かつ丼」を見た事がないので、ひょっとしたらこの記憶はまぼろしなのかもしれない。
※ググったらまだあった


「あの頃」は、もう10年以上も昔の事なのか。
この日久しぶりに会った新郎&新婦、そして当時の仲間たち。みんなあの頃のように仲が良くて、愉快なままで嬉しかった。10年もあれば、そりゃみんないろいろあって、変わった事も少なくないと思うけど、やっぱり私には何にも変わっていないように見えた。


富士そばを出て、彼とも別れ、ホテルの部屋に戻った。
着替えもせずに、スーツのままベッド仰向けになった。
ベッドの上でタバコを吸うなんて、何年ぶりだろう、と思った。

なんだか私はいつの間にか、もの凄く遠くまで移動して、すっかり「あの頃」の事を忘れてしまっている自分に気がついてしまった、ような気がした。

待てよ、ひょっとしたらあの頃のあの部屋に、なにか大事な忘れ物をしているんじゃないのか?大丈夫か俺?ちゃんと持って来たよな?バッグに入れたはずだよな?

という類いの不安に駆られ、私はこの夜、眠れなくなった。

そして、翌日、私は旅に出る事にした。


つづく

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